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第二十三話 身近な危機

Author: 文月 澪
last update Huling Na-update: 2025-12-08 08:49:30

  それは、有り体に言ってしまえば貞操の危機。

 優斗にそのは無い。至ってノーマルだ。しかし、律は性別など気にもかけないのか優斗に執着している。舐めるような目で見られて鳥肌が立つ時さえあった。きっと優斗が女でも同じように接するのだろう。その場合は更にやばい事になりそうだが。

 それなのに同じ部屋だなんて。

 寝室は別でも全然安心できなかった。

「今からでも別の部屋にできないんですか!?」

 それに応えたのは小路だ。

「無理です。既に手続きは終わっていますし、部屋に空きもありません。宮前君は家事も一通りできますし、小堺君にも利はあるのではないでしょうか」

 その言葉に気を良くした律が口を挟む。

「そうだよ~。俺良いお嫁さんになるよ? 優斗になら全力で尽くしちゃう! 優斗は何が好きかな? お肉? お魚? 俺、優斗が喜んでくれるならどんな料理でも頑張るからね! 洗濯も掃除も任せてよ!」

 そう言って胸を叩く律。

 ずいと近付く顔に優斗は思いっきり引いた。

「嫁ってなんだよ!? 僕は男だぞ! お前も男! そこの所を間違えるな!」

 言いようの無い恐怖に引きりながらわめく優斗にも律は何処吹く風。にこやかに笑いながら爆弾を投下する。

「ええ~。そんなの関係ないよ。今は多様性の時代なんだから。恋愛の形も自由! 俺は優斗の事大好きだよ? もう食べちゃいたいくらいに」

 その顔は恍惚に浸っている。頬を染め瞳を潤ませて、律の手が優斗の太腿を撫でる。

 優斗の背中がぞくりと粟立ち、息を呑んだ。狭い車内では逃げ場も無い。助けを求めるように声を張り上げた。

「あ、東さん!」

 その様子に東はやれやれと面倒臭いのを隠そうともせず、やる気がなさそうに律をいさめる。

「律。ここではやめてくれや。この車レンタルなんだしよ。汚したら追加料金取られるだろうが。そういう事は家でやれ。それにあんまりがっつくと嫌われちまうぞ? 焦らずじっくりと攻めるのが定石だ」

 生々しい表現をする東にこいつもやっぱり同類かと優斗は危機感を募らせる。

 そんな優斗を他所にたかぶる衝動を止められた律はブーたれて東に辛辣な言葉を投げかけた。

「さすが片っ端から女の子にちょっかいかけて振られまくってる人の言葉は重みが違うね。でも俺はそんな失敗しないし。ね、優斗。俺達死ぬまで一緒
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